QCサークル 2019年8月号(No.697)


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解説という言葉の定義については,「匠」「匠の技能」と呼ばれるその分野のモノづくりに優れた人の技能,というような簡単な説明ぐらいしかあまり見ることはありませんが,もう少し掘り下げて考えてみると以下のようなことがいえると思います。①長年その仕事に携わるだけでは到達できない“奥義”が秘められている②手順書や標準書に記載するには表現が難しい“カン・コツ”がある③匠(ベテラン)に直に教えてもらわないとその技能を再現することが難しい「匠の技能」はモノづくりの技能という側面で考える場面が多いのですが,上記の点を踏まえると名医による手術の腕であったり,料理の世界であれば名店の味を作り出すのも「匠の技能」の一種といえるでしょう。これら「匠の技能」は,その技能を有する会社や組織の競争力の源泉にもなっており,事業を存続していくためには,「匠の技能」の伝承は大変重要な課題です。そこでどのようにして伝承していけばよいか,一般的なやり方をまとめてみました。1.一般的な伝承の方法段階準備育成内容補足説明1.対象技能の標準書作成2.後任(新人)の適任者を確保原理・原則,カン・コツなどを可能な範囲で記録します(暗黙知の形式知化)。職種によっては本人の資質が問われます(適性判断が必要な場合あり)。1.匠(ベテラン)が現場・現物でやってみせる新人ができるようになりたい!と思わせるよう「匠の技能」を披露します。2.標準書をもとに原理・原則,カン・コツの説明見ているだけでは伝わりにくい部分を解説します。その伝え方によって修得時間に差が出ます。3.作業標準の理解実践訓練の前に,手順や注意点(特に安全面)が理解できているかを確認します。4.実践訓練「匠の技能」を修得するまで実践指導します。定着1.実務,訓練で技能維持使う頻度の少ない技能では定期的に訓練が必要です。一般的な業務の引継ぎと「匠の技能」の伝承との違いは,特に育成の4.実践訓練にかける時間が大きく異なることでしょう。ただし,全般的にはQCストーリーの最後のステップの「標準化と管理の定着」に似ていますね。10QCサークルNo.697


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