QCサークル 2021年3月号(No.716)


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体験事例1ます(図・2参照)。なお,標準書にはLIDの持ち方の指示は記載されていませんでした。LIDの凸発生部位の裏側にはレインフォース(補強材)がついており,RUBはレインフォースに取りつけるようになっています。では,なぜ持ち方が違うと不具合の発生に差が出るのか?なぜほかの車種で出ないのか?の疑問に答えるため,LIDとRUBの押し合う力の関係,班別の作業の違い,ほかの車種との違いを調査することにしました。はじめは,押す力を測定する方法がわからず苦労しましたが,最終的にPUSH・PULLデジタル測定器に工夫を加え,緩衝材を貼付した「測るんですキャップ」を考案したことで傷を入れることなく測定できるようになりました。測定はRUB挿入力の最大値と,LID受け時の支え力の最大値を測定しました。判定を官能評価で,BAD・POOR・GOOD・EXCELLENTの4段階に分け,押え力,支え力を3つのパターンで調査した結果を図・3に示します。パターン①パターン①凸発生状況件数パターン②凸発生状況件数パターン③凸発生状況件数LID支え力(N.m)RUB押え力(N.m)パターン②RUB押え力(N.m)LID支え力(N.m)パターン③RUB押え力(N.m)LID支え力(N.m)図・3LID支え力とRUB押え力の関係このデータを基に,A,B,Cの各班の実績を当てはめると,A班は双方の力が非常に大きいパターン①と判定。B・C班は同等のレベルにあり,A班より力が小さいパターン②と判定されました(図・4参照)。2021年3月号33班表面部を支えている挿入時,支え手は点で受けている班端部を持っている・挿入時,支え手は面で受けている図・2LIDの持ち方の違いまた,LIDのアウターパネルとレインフォースの間には0.2mmのすき間があることが確認できました。試しにアウターパネルとレインフォースの間に0.15mmの紙を挟み,RUBを押し込むと挟み込んだ紙にキズが発生し,干渉していることがわかりました。RUB取付前後の工程で,凸の発生を確認すると,A班で作業したLIDの80%で凸が発生していました。この補修には板金で台当たり7分かかっています。以上をまとめると,LID表面を支えRUBを取りつけることで,双方に押し合う力が働き,LIDとレインフォースが強く干渉し凸が発生すると考えられます。学びどころ持ち方に違いがあることに気づき,かつ,それは作業標準には記載がない点を確認したうえで,この持ち方が不具合発生に悪影響を及ぼしていることを突き止めました。サークルの現場観察力が高いことがわかります。


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