QCサークル 2022年3月号(No.728)


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特集我々の技術・技能・ノウハウ・経験は次世代に伝わったか?らじ面づ会社・組織にとって,「人」はリソース・資源の一つにあげられ「人財」と表現されるほど大切な存在です。経験を積み,技術を磨き,かけがえのない存在に成長していきます。みなさんの会社でも,卓越した製造技術や研究所での「技」を身につけたベテランは,若手の目標となっていることでしょう。固有技術に限らず,上手な仕事の仕方は憧れの的でもあります。一方で,会社は計画的な配置換えにより社員の成長や全体最適を目指します。また,終身雇用が当たり前だった時代も今は昔,突然の退職によって穴があくことも珍しくありません。先輩やベテランが急にいなくなることに不安を覚えた人も少なくないのではないでしょうか。しかし,冷静に考えれば,長くいてほしい先輩も,いずれは退職を迎えます。昨今,特に注目を集めているのが団塊世代の退職問題です。団塊世代が70歳を超えるようになりました。団塊ジュニア(40~50歳代)の世代が伝える側になり,今,その技術は20~30歳代に引き継がれようとしています。世代をまたいで継承していかなければ,永く会社を支えてきた技が失われかねません。現場の技術力を一定(以上)に保つために,自部門に必要な技術を特定し,必要な標準類を整備して,その教育訓練プログラムを用意するといった取組みを多くの会社でされていると思います。ところが,ベテランや先輩が伝えたいと思ったことをマニュアル化することは決して簡単なことではありません。コツやノウハウを文書化する難しさだけではなく,そこには,字からは伝えきれない「思い」があるからです。苦い・つらい経験から身につけた技術を,その経験談も含めてマニュアル化することは現実的ではありません。今回の特集では,近畿編集小委員会委員による「技術・技能・ノウハウ・経験の継承」の事例を紹介させていただくことにしました。「伝承する側」と「伝承される側」,それぞれの立場から「技術・技能・ノウハウ・経験は次世代に伝わったか」について紹介いたします。紹介する6つの事例は,単に,伝承のための仕組み構築プロセスだけではなく,ベテランや先輩が伝えたいと思ったその気持ちが伝わるような企画にしました。事例1新指導員と研修生の思いを形にした社員研修事例2組立作業指導の本来の目的とねらい事例3デジタル技術を活用した遠隔支援型巡視事例4匠の技を数値化し,暗黙知の可視化事例5事例65ゲン主義の視点で,ものづくりの楽しさとおもしろさを伝承5Sの徹底で若手とベテランの困りごとの共有技術や技能を伝承することの重要性を再認識する機会になるとともに,伝承の難しさを克服するひと工夫を知ってもらえればと思います。伝承した技術・技能・ノウハウ・経験が,若手たちによって活かされているキーポイントが何であったか,気づいてもらえることを期待しています。(榊秀之)近畿編集小委員会3月号特集メンバー委員長/猪原正守委員/北川泰弘,楠和彦,榊秀之,島田茂雄,清水義浩,高木美作恵,名倉三加代,花田貴志,藤本史穂,山㟢崇,山来寧志2022年3月号9


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