QCサークル 2019年7月号(No.696)


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特集ちょっと違ったデータのとり方・使い方具体的な事例を見てみよう溶接熱ひずみの見える化への挑戦㈱小松製作所茨城工場ミステリーサークルホイールローダーWA500のモデルチェンジに伴い,新設計のリアフレームの検査を行うことになりました。リアフレームはホイールローダーの骨組みとなる部品で多くの部材を溶接することでつくられており,複雑な形状をしています。溶接の工程は,治具で位置決めした部品を仮付溶接することで製品の形をつくり,その後,強度を確保するための本付溶接を行います。仮付溶接や本付溶接を行う際には局所的に大きな熱が加わりますので,完成品には熱ひずみが発生し,決められた許容範囲をはずれてしまうことがあります。1)溶接ひずみの調査そこでまずは,多くの熱が加わる本付溶接前後の寸法測定を行いました。結果は仮付溶接後の寸法は許容範囲に入っていましたが,本付溶接を行うと75項目中14項目も許容範囲からはずれていました。このような場合には,溶接後の形状を計測し,発生するひずみの量を把握し,その値に応じて位置決めのための治具を補正するのが普通です。しかし,個々の寸法を測ることにより,どの部分が許容範囲に入っていないのかわかるのですが,複雑な形状をしているリアフレームの場合,全体のひずみのイメージがわからないので治具を作成するための補正量が決められないのが問題でした。2)3Dスキャナーを使ったひずみ分布の把握そこで,対策として,リアフレーム全体の3次元形状を測定するため専用カメラシステム(3Dスキャナー)を導入して,ひずみの分布を把握することにしました。このシステムにより得られた三次元データから三次元モデルを作成し,本付溶接前後の形状を比較し,はずれている量を色で表示することで,治具の補正量をつかむことができました。3)ひずみに基づく位置決め治具の補正結果として,通常は安定するまで3台程度製作し,補正量を決めていましたが,専用カメラシステムを利用することで,今回は1台のみの製作で品質を安定させることができました。また,検査工程のリードタイムも約3日短縮することができました。(第5655回QCサークル茨城地区秋季大会より)(大津渉)ひずみ2019年7月号11


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