QCサークル 2020年8月号(No.709)


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特集「いつでも/どこでも/誰とでも」—QCサークル活動の拡がりを夢見て—1.こんなWin-Winのお話ですとある地方のローカル駅でのできごとです。この駅は,近隣の高校に通学する高校生が乗車の大半を占め,通学・帰宅時間がもっとも混み合います。平日は毎日,駅員の整列乗車を呼びかける怒号が飛び交い,高校生はそ知らぬ顔,うんざりという顔をしています。このままでは安全確保,定時運行が確保できず,高校生以外のお客様にも迷惑をかけてしまいます。事態を重く見た駅長は,乗客である高校生を巻き込んでQCサークル活動ができないか駅員に提案,さっそく近隣の高校の校長先生へ協力をお願いしました。高校には郊外学習のカリキュラムがあるので校長は快く引き受けてくれました。こうして駅員と高校生という異色の組合せで「駅のラッシュアワー時の混雑緩和」をテーマに活動が始まりました。なぜ混雑してしまうのか要因を出し合いましたが,最初はお互いに責任をなすり合い険悪なムードに。しかしながら「なぜ」,「なぜ」と深掘ることでお互いを理解し合い,いつしかワイワイガヤガヤ。利用者と一緒に原因を探り,お互いにとって一番よい対策を一緒に立案・実施,見事問題を解決したお話です。2.学びどころは何この事例から学ぶべきことの第一は,従来QCサークル活動は「同じ職場内」でメンバーを集めて問題解決を行うことが常識でしたが,その常識の壁を越え,駅員だけでなく,その問題にかかわる乗客の高校生をも巻き込んで活動をしたことです。QC的ものの見方・考え方に「後工程はお客様」がありますが,私たちの仕事には,必ずその結果を受け取るお客様がいます。そしてよい品質とは「提供する製品・サービスが利用者にとって最適であること」が求められます。そうであれば利用者であるお客様・関係者を巻き込んでQCサークル活動をするべきです。そして問題解決のために関係する人々の意見を聴き,一緒に原因,対策を考え全員が納得し満足(Win-Win)できる活動をすることが重要です。まずは,QCサークルは「同じ職場内」でやるものだという心の壁や思い込みを取り除きましょう。次に学ぶべきポイントとしては,なぜこの事例が成功に至ったのか,その成功要因を知ることです。一つは関係者を巻き込んだことで関係者全員の幸せ(Win-Win)を目指すというパラダイムへシフトができたこと。そして2つ目は,責任者や上司(駅長,校長)の理解と援助によって,最適なサークル編成ができたことが,重要なキーポイントとなります。3.今後の活動に向けて今回の事例から得た知見を今後に活かすとしたら,まずは「同じ職場内」にこだわるのではなくテーマに応じて前後工程,部門の壁を越えて関係者を巻き込んで活動をすること(クロスファンクショナルチーム)。そして関係する人々の満足(Win-Win)を追究することで,「部分最適から全体最適へ」,あるいは「利己から利他へ」価値観の大転換をはかることができます。結果として関係者の喜ぶ姿,感謝の声を聴くことで,サークルとして大きな達成感を得ることができます。QCサークル活動は現場のもの,製造業のもの,私たちには関係ないと思われている管理・支援部門,サービス業の方もいるかもしれませんが,管理・支援部門であれば社員(社内顧客),サービス業であればお客様を巻き込んでぜひQCサークル活動をしてみてください。新しいやりがいを見つけることができると思います。これがQCサークル活動の力なのかも知れません。(野上真裕)2020年8月号11


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