QCサークル 2019年6月号(No.695)


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特集『失敗を成長につなげる』—失敗を活かして成長につなげるためのキーポイントを探る—1.モノやサービスの品質はお客さんが評価この章のタイトル,「客感」とは,お客様の感覚で仕事をする,お客様の感想といった意味です。仕事の出来ばえの評価は,お客様の感想そのものということです。お客様を「後工程」と読み替えることもできます。モノやサービスにはお客様からの要求品質があり,それを達成させるために作り手やサービス提供者(以後,提供者といいます)が品質特性とその基準を決めています。提供者はその基準を満たすように仕事をします。しかしお客様の要求は,世の中の流れやお客様自身の変化などによって変わってきます。提供者が臨機応変に,特性項目や基準を変えたりすることも必要でしょう。2.失敗を活かすには早く失敗に気づくこと誰しも「失敗」はしたくありません。それが故に「失敗」を認めたくない,という想いもあります。前頁のラーメン屋さんの店主は仕事熱心で,自分の仕事にプライドを持っています。しかし,今回はそのプライドが原因で,自分の「失敗」に気づくことが遅れてしまったようです。「独りよがり」であったともいえます。いかに早く,自身の「失敗」に気づくか?がポイントになりそうですね。3.客観的な評価この店主は来客数が減ってきたという事実には気づいていました。しかし,その原因が自らの「失敗」とは思ってもいなかったようです。まさにプロダクトアウトです。苦情を言ってくれるお客様は神様ともいわれます。しかし低価格で他に選択肢があれば,お客様がそのモノやサービスに不満を感じても,何もいわず無言のまま別の選択肢を選んでしまうことも多くあります。提供者が「失敗」に気づいた時にはそれなりに時間が経過し,対応が手遅れになる場合もあります。失敗」に早く気づくためには,声なき声,見えない指標を顕在化させることなどが大切です。昨今では飲食店のみならず,インターネットで,モノやサービスへの不特定多数のお客様からの評価の声が聴けます。今回の事例でも,遅ればせながら店主がそれに耳を傾け,「失敗」を認め,その対応をしたことによって,お店の評判を取り戻せました。この店主は,今までは人の意見を聞かず,自分が最高と思った方法がお客様に喜ばれる,と信じていました。そんな店主が「失敗」を認め,お客様の意見を聞き,それを自分の仕事に反映させるようになった,このことがこの店主の成長です。余談ですが,この店主,家でも同じで,奥さんからも愛想をつかされていました。しかし今回の「失敗」を理解し,奥さんの気持ちに立って物ごとを考えるようになり,家庭円満になったとか…?4.QCサークル活動への応用サークル活動でも活動の「失敗」に早く気づくことが大切です。そのためには,まずは計画どおりに活動が進んでいるか?とか,活動の指標(会合回数や提案件数,テーマ完了件数など)を数値化するなどという方法もあります。しかし先ほどの事例から,お客様,あるいは後工程での評価を知ることが大切であると学びました。たとえば,完了したテーマが後工程でどのように評価されているか,などを見てはいかがでしょうか。テーマ完了後,一定期間経過した後に後工程に感想を聞き,活動の評価(「失敗」の確認)をする,という活動の仕方もあります。活動の評価を,自分たちが立てた計画対比のみを見ていては,後工程への「影響」もわからず,活動の「失敗」に気づきにくいものです。客感」の意識を持つことによって,木を見て森を見ず」や「独りよがりの活動」,プロダクトアウトの活動」にならないようにしたいですね。(遊馬一幸)2019年6月号11


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